『先哲・石田梅岩の世界』
清水 正博 編
商人は武家社会で最下位の職業とみなされた。武士は義に生き百姓は食糧を収穫し、職人は物を作った。しかし商人は「百姓や職人が汗水たらして作ったものを、右から左へ売りさばくだけ。けしからん」というのである。それに異を唱えたのが石田梅岩であった。「作ったものを多くの人たちに食べてもらい、使ってもらうために働き、適正な利を得るのは当然」と説いた。まだ「流通」という言葉はなかった時代。彼が「先哲」といわれるゆえんである。その思想を、さまざまな事例を用いて示しており、日常に実践するためのガイド本として役立つように作られている。