子孫へ「自分史」を残そう
自分史づくりが静かなブームになっている。私は五十歳を機に「一冊の自分史づくり」を呼びかけ、全国を講演行脚した。「いくらぐらいかかるでしょうか」と、まず費用のことを聞かれる。出版を意識されているからだ。書店に並んでいるような本を作るのは大ごと。自分史づくりを「本の出版」と勘違いされている。そもそも自分史に定価をつけ、商品と考えるのがナンセンスなのだ。
「記憶は一代、記録は末代まで」とアピールしたように、体験や考えを書き残すのが自分史づくりの本質だ。大学ノートでもよかろう。「ここに私の生きた証(あかし)が記されているんだ」と書き残しておけば、子どもたちがいつかは読んでくれる。言葉で聞かされたときと、その気になって読むのとでは重さが違う。親を困らせた息子ほど、あなたの文字が胸に突きささる。しゃべるのもよいが、グチととられやすい。「また始まった」とけむたがられる。それならば書くことだ。書けば、それはあなたの「言葉」として、子どもたちの心の中に生き続けるのである。
「貧乏と苦労はだれにもひけをとらない」と思う人は多い。物質的な遺産を残してやるのは大変だが、あなたが波乱の中を生き抜いた自分史を「心の遺産」として、残してやるのは誰でもできます。子孫へしっかり継承される「一冊の自分史づくり」に大金はいらない。子どもたちに配るだけなら五冊か十冊もあれば十分。ワープロで打ったり、筆ペンで書いて複写機でコピー製本する手づくりの方法もある。書くのが苦手といわれる方のために、質問に答えていけば出来上がる対話式の便利なノートもある。私が考案した。
今日の平和で豊かな社会は、大きな犠牲の上に築かれていることを、先人として書き残していただきたい。
(株)新風書房代表取締役・「自分史作り方教室」講師 福山琢磨
「自分史のすすめ」
「自分史のすすめ」は自分史研究家でもある福山琢磨が書き下ろし、大阪新聞(1998年)に掲載されたものです。(編集の都合上、文章が一部変わっています。)
- 第1回 孫へ手紙を書くつもりで
- 第2回 除籍簿など資料の整え方
- 第3回 「記入式ノート」の使い方
- 第4回 「人との出会い」を書く
- 第5回 読み手を意識して書く
- 第6回 「自分だけ史」では嫌われる
- 第7回 ペンの力は強し
- 第8回 トラブルも増えている
- 第9回 大切な編集者の役目
- 第10回 自分史は「人生の感謝状」
- 第11回 自費出版は売れるか
- 第12回 国会図書館へも送ろう
- 第13回 出版費用はどのくらいか
※このシリーズは一冊の冊子になっています。ご希望の方はお申し込みください。(無料)「記入式自分史ノート(価格2625円)」を手元におき「自分史のすすめ」をご覧になれば、「なるほど」とご理解いただけます。
